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綾なす愛色【鬼滅の刃】

第2章 優しい約束、哀しい約束





「旦那!待たせたね。綺麗に包んどいたからよ!旦那も頑張れよ!」

「それは有り難い。頑張る?何をだろうか?」

「またまたぁ。一世一代の大勝負に、俺んとこの襟留が色を添えられるってのは、いい気分だ。健闘を祈ってらぁ!」

手の上に、力強く乗せられた綺麗な包み
それを懐にしまうと、店主は満足そうに笑い俺の背中を勢いよく叩いた

「いい報告待ってるぜ!」

「あっあぁ…。今度はその女性と一緒に来よう。女性の好きそうなよい店だ」

「おうよ!逢瀬にゃぴったりだろ?楽しみに待ってるぜ」

通りに放り出させるように背中を押され、向かうは薫さんの屋敷
うっすら額に汗をかく気温だ
風が吹けば髪が靡き、気持ちよい

懐に認めた襟留に手を当てれば、どのように渡そうかとそればかりに気を取られる
彼女は喜んでくれるだろうか?
勝手に緩む顔を引き締める術を知らない俺は、さぞ滑稽な顔をしているのだろう
そんなことは、どうでもいいくらい心は踊っていた
友人が出来ると言うのは実に気持ちを豊かにしてくれるものだ

隊士ではない友人と言うのは、なかなかできるものではない
生きる環境が違いすぎるからだ

しかし、俺には友人ができた
薫さんと言う、鬼殺隊に何ら関係のない女性だ
世界が広がった気がする

紫陽花を大切に育てる繊細な姿も、大きな握り飯を嬉しそうに作ってくれた姿も、どれも新鮮だった
薫さんといる時は、明日の命がわからない世界に身を置いていることを忘れさせてくれる
1人の人として、男として自然体でいられる
それがこんなにも心地よいことなんだと教えてくれたんだ

「今日はよい日だ」

降り注ぐ陽光が、薫さんの屋敷までの道を明るく照らしてくれているようだ
ここからは、そう遠くない
ゆっくり歩いて行けば、約束の時間ちょうどに着くだろう

時折、懐に手を当て襟留めの感触を確かめた
せっかく海に行くのだ
海で渡すのがよいだろうか

何度もその時を想像しながら、気づけば薫さんの屋敷は目前だった
襟元を正して、扉に手を掛けた
だが力を込める前に扉が開いた

宇髄が中から開けたのだ


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