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綾なす愛色【鬼滅の刃】

第2章 優しい約束、哀しい約束





————湯浴みをし、身支度を整えた
着物に袖を通したのはいつぶりか?
隊服とはまた違った着心地に背筋が伸びるようだ

「これでよいだろうか?」

鏡に映る姿を見れば見慣れぬ自分がいる
宇髄からは、くれぐれも隊服では来るなと言われていた
あくまでも今日は、一人の男として来るようにと

”逢瀬だってこと忘れんなよ”
とも言っていた
逢瀬と言うのは、恋仲の者同士がするのではないだろうか
しかし、悪い気はしない
何せ特別な時間を過ごせることに変わりはない

濃い臙脂色(えんじいろ)の着物に、同じ色の羽織
髪を掬って結べば、足は自然と玄関へ向く
約束の時間には十分間に合う

千寿郎に見送られる中、屋敷を出た
鬼殺へ向かう時とは違う気持ちの高まりが、俺の足を速める

「やはり着物は些か動き辛いな」

隊服に慣れた体は着物の不自由さが気になる
それでも、これから訪れる特別な時間を思えば、その不自由にさえ心踊るのだから不思議なものだ
足を速めたくても、着物の裾がそうは許してくれない
そのもどかしさが、薫さんに会いたい気持ちを加速させた

まるでお預けを食らっている犬のようだな

落ち着かない気持ちを抑える為に街に足を向けた
昼間に街に来るのは久方ぶりだ
夜とは違い活気に溢れている

店先には色とりどりの小物や食器、食材がその店その店の魅せ方で広げられていた
こうして、人々が安心して生活をしてい光景を見るのが好きだ
この者達の営みを守っているのだと、鬼殺への活力になる

一件一件見渡して行くと、若い女性が群がる店を見つけた
以前来た時には無かった店のようだ


近づいて見ると、女性の手のひらに収まる大きさの飾りが売っている店だった
髪飾りか?

「ねぇねぇ、これ!綺麗ねぇ。牡丹かしら?」

「あら、こっちの椿も綺麗!これね、襟留なんですって。ほら…こうして付けると、可愛いでしょ?」

2人組の女性の話を聞くに、どうやら襟留のようだ
そこに一際目を引く品があった
白を基調としているが、虹色に輝いている
桜の形のそれは、真ん中に真珠がついており美しさの中に可愛らしさものある襟留だった

思わず手に取ってみると、光に当たったせいか虹色の輝きが増した

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