第2章 優しい約束、哀しい約束
小さくも温かい手が、俺の心をほぐしていくようだ
薫は俺に辛い恋をしているのかと訊いた
辛いんじゃねぇ
大切にしすぎていて身動きがとれねぇ
そんな俺に百戦錬磨だと思ったと言ってのけた
確かに今まではそうだったかもしれねぇ
だが、それが何の役に立つ?
薫の前じゃ、まるでひよっこだ
99人の女に好かれるより、たった1人
薫だけに好かれりゃいい
他は何もいらねぇ
焦っちゃいけねぇと、自分に何度も言い聞かせたはずだ
それがいざ薫が目の前にいりゃ
手に入れたくなる
薫が真剣に俺の心配をしていることが声色からわかる
だから殊更、下手動けねぇわけだ
この天然と鈍感、どうにかならねぇか…
「俺も初めてよ。こんな鈍感で天然でふわふわして気づかねぇやつ」
「鈍感なんだ…天元さんの表現が足りないとかはないの?」
言ってくれるじゃねぇか
普通、いくら俺が慎重に事を運んでいるったって
さすがに気づかねぇか?
「そうかもな。もっと積極的にいかねぇとだめかもしれねぇなぁ?」
どんな顔して俺の心配してやがる?
薫の肩から顔を上げて、こっちを向かせりゃ鳩が豆鉄砲を食ったような顔してやがる
それが可愛くて堪らねぇんだ
「なぁ、口付けの一つでもすりゃ気づいてもらえると思うか?どうしたら手に入れられる?」
薫が退けそうになった手を押さえて、俺はとんでもねぇ事を口走った
薫の呼吸が速くなり、荒く呼吸をし始めた
焦っていることは一目瞭然だ
目を泳がせながら、口をぱくぱくさせてやがる
「えっと…ちゃんと好きって伝えてからそうゆう事しないと、ダメ…だと思う」
辿々しくやっと紡いだ言葉
何を言うかと思えば、確かなる正論だ
俺の誘惑に乗らねぇ薫は肝が座ってる
それに引き換え俺は、勢いに任せて口づける一歩手前だった
薫の香りに吸い寄せられる
薫にそんなつもりはなくとも、勝手に誘惑されてんのは俺の方だった
そんな自分が可笑しくて笑えてくる
「ぷっ!!お前さぁ、こんな色男が至近距離にいるってのに雰囲気ぶち壊すなよなぁ」
こいつはちっとも靡かねぇ
鼓動が速くなる音も乱れた呼吸も
俺の耳に届いている
それだってのに、確固たる確信がねぇ内は身動きがとれねぇんだ