第2章 優しい約束、哀しい約束
俺の中に芽生えたいたずら心
薫を驚かしてやるか?
足音を立てねぇように部屋へと向かう
気配を消すのは朝飯前だ
光の射し込む廊下の前で立ち止まると、目に入ってきたのは鏡の睨めっこする薫の姿
ワンピースを体に当てながら、ぶつぶつとひとりごととため息だ
”似合わない”
だの
”やめよう”
だの言ってはため息をついている
薫は、自分自身の魅力に気づいてねぇ
俺は驚かせるつもりでいた事も忘れて
薫に見入っていた
まるで気づく気配のねぇ薫は、悩んだ末にワンピースを諦めるようだった
白い肌に映える青は、海に行くにはもってこいだ
今日の主役は薫
あいつの魅力を存分に引き出してやらねぇとだ
「すげぇ似合ってるけどなぁ?着てくれねぇの?」
俺の一言に、ワンピースを放り出して驚いた薫
今度は驚かせるつもりなんてなかったが、盛大に驚いて振り返った
鳩が豆鉄砲喰らったような顔する薫に、一歩ずつ近付いて行く
玄関の鍵が施錠されていなかったことを伝える俺の言葉は、どうやら右から左のようだ
素顔の俺が珍しいからか?
隊服じゃねぇ俺が見慣れないからか?
薫の気持ちはまるで予想がつかねぇ
感情表現が乏しいわけじゃねぇのに
煉獄の存在がチラつくからか?
薫は少なからず煉獄に好意がある
それが恋慕かはわからねぇ
友達が欲しいと言った薫だ
友情からの好意かもしれねぇ
あ゛ぁー!!!
こんなことをグダグダと考える間に出来ることがあるだろうが
薫の放り出したワンピースを拾うと、薫の体に合わせてみる
鮮やかな青は薫の白い肌に良く映える
これを着ねぇって?
勿体無いねぇだろ
くるっと鏡台に向かせると、後ろからから抱きすくめるようになる
薫の香りに酔いそうだ
こうなりゃ口実なんて何だっていい
薫に触れたい、近づきたい
湧き上がる欲を抑えられなくなる
「これ着てかねぇ?すげぇいいと思うんだよな」
図らずも薫の肩に顔を乗せるようになる体勢になった
鏡越しに見る薫は、いくらか頬が紅潮したように見えた