• テキストサイズ

綾なす愛色【鬼滅の刃】

第2章 優しい約束、哀しい約束





俺は柄にもなく浮き足立っていた
朝の目覚めは良好
天気も良好

後は薫が穏やかに過ごせていたかどうかだけだ
危ういアイツはいつ負の感情に転ぶかわからねぇ
だがそれの心配もいらねぇ
何度も薫のこっそり様子は見に来ていた
あいつはにこにこ顔で花に水やりをしたり、縁側で呑気に昼寝をしてたこともあった
そんなあいつを見る度に安心して屋敷を後にできていた



煉獄とは薫の屋敷で落ち合うことになっている
少しの抜け駆けくらいは許せよ煉獄
あいつの心配を口実に早めに出立だ
逸る気持ちを抑えゆっくり歩いて向かう

夏に片足を突っ込んだ気候は、風が湿っていて不愉快だ
それが今の俺には心地良いんだから、笑っちまう
海に行くにはうってつけの気候ってわけだ

「こりゃ、暑くなりそうだな」

緩む顔を陽光に向ければ、煉獄には負けられねぇと気が引き締まる

「まったくガキみてぇだわ」

道端に控えめに咲く花を見りゃ、あいつのぎこちない笑顔を思い出す
肌に纏わり付く風は、出会った日を思い出す
終いには、任務中に見上げる月でさえ薫の顔に見えてくる

俺は重症だな
完全に薫にどっぷりだ

ゆっくり歩いていくつもりだった道のりも、いつの間にか速足だ
こっそり何度も通った道
見慣れた風景にさえも愛おしさを感じるくらいだ

ただ何度見ても胸糞悪さが湧き上がるものもある
薫の屋敷だ
隠すように街から外れ、やたらとでかい屋敷
こいつの存在を隠すように作られた屋敷は、1人で暮らすに嫌味なほどでかい

ここで薫は孤独に耐えながら日々を生きていた
ここしか薫の居場所はねぇんだ
人肌恋しくなるのも無理ねぇな…

辛気臭い顔から色男へと作り直す
随分早く着いたようだ
少しの抜け駆けのつもりが、ここまでくると言い訳もできねぇな
時間を潰そうかとも思ったが、薫に会えると思えばその選択肢は消えていった


「薫ー!いるかぁ?」

声をかけるが、静まり返ったままだ
手をかければ、いとも簡単に開く扉

「おいおい、物騒だな」

人の気配はする
薫は間違いなくいる

「入るぞー?」

長い廊下の先に、光がさしこんでいる
襖が開けられている証拠だ
薫はあの部屋にいるんだろう

/ 73ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp