第2章 優しい約束、哀しい約束
思わず天元さんの頭に乗せた手を引っ込めようとすると、その手を押さえられてしまった
「なぁ、口付けの一つでもすりゃ気づいてもらえると思うか?どうしたら手に入れられる?」
唇に吐息がかかる
それだけ近距離ってことだ
「えっと…ちゃんと好きって伝えてからそうゆう事しないと、ダメ…だと思う」
自分でも何言ってるんだろうと思う
散々愛のない行為しておいてね
でも、そうゆうことはちゃんとした方がいい
天元さんが幸せになる為にもね
「ぷっ!!お前さぁ、こんな色男が至近距離にいるってのに雰囲気ぶち壊すなよなぁ」
肩を揺らしてクククと笑う
私何か変な事言ったのだろうか?
「だ、だ、だって!そうゆう事は好きな人にするものでしょ!」
「へぇ?俺が好きな人にするような事をしようとしてたってか?」
あーもうひどい!
そうやってすぐ揶揄うんだ
そうだよ、天元さんが私にそんなことする筈ないよ
好きな人いるんだから
「私の勘違いでした…もう、いじめないでよ…」
「わりぃ、わりぃ。天然ちゃんは揶揄いたくなるのよ。さてそろそろ煉獄が来る頃だろう。薫はちゃんとそれに着替えて来いよ?玄関で待ってるからよ」
手をヒラヒラさせて行ってしまった
私はその場にへたりと座り込んで、少しの間動けなかった
「はっ!支度しなくちゃ」
遠くで杏寿郎さんの声がした
天元さんと何か話しているみたい
こうしちゃいられない
早く支度して行かなきゃ
今日は約束の日なのだから
————ワンピースを着て、髪を結う。唇には紅を乗せた
お洒落するなんて、滅多にないから照れ臭い
私は恥ずかしさを胸に玄関へ向かう
「薫さん」
ちょうど居間に差し掛かった時、縁側から杏寿郎さんの声がした
「杏寿郎さん?どうしたの?天元さんは?」
「今宇髄が厠を借りている。すまないが、こちらへ来てくれるか?」
縁側に腰掛けていた杏寿郎さんの所へ行くと、ぽんぽんと隣に座れと促された
「後ろのボタンが開いている。閉めてもいいだろうか?」
後ろにボタンがあるワンピース
後で閉めようと思ったまま忘れていた…
「お願い…します」
恥ずかしい!
恥ずかしい…!!
すごく恥ずかしい
「髪を上げてくれ」
「あっ…はい。」