第2章 優しい約束、哀しい約束
薫さんが宇髄へ礼を言った時
俺は初めて嫉妬というものを知った
あの日彼女が目覚めるまで、そばにいればよかったと後悔した
俺はこんな気持ちは知らない
焦りと後悔だ
その笑顔を俺には向けてくれないのか?
俺はこんなに独占欲が強いのか?
何もかもが初めて知る感情だった
宇髄のことなど言えんな
「煉獄さん…?難しい顔をしてる。何か考えごと?」
いつの間にか薫さんは俺の前にいて、俺の顔を覗き込んだ
近い…な
警戒心がない証拠なのだろう
だが、俺とて男
俺は全く意識されていないということなのだろうか
「いや、紫陽花が綺麗でな。手入れが行き届いているなと感心していた」
「そうでしょ!自慢の紫陽花なの。紫陽花ってね…移り気、浮気って花言葉なの。でもね、色ごとの花言葉は…青い紫陽花は辛抱強い愛情なの」
薫さんは俺と宇髄の間に腰掛け
遠い目をして紫陽花を見つめていた
「辛抱強い愛情って、どんなのだろう…お母さんも辛抱強い愛情、待ってたのかな…」
いつになっても来ない待ち人を待ち続けた彼女の母親は
ついに耐えきれずに命を絶った
彼女に向けられることのなかった愛情は、命と共に一緒に消えてしまった
「薫、愛情ってのは何も母親から貰うだけじゃねぇ」
「私も、貰えるかな…」
薫さんは自信なさげに俯き、膝を抱えた
そんな小さく丸めた体を、抱きしめたい衝動を拳を握り抑える
耐えるんだ
「あぁ!!貰えるに決まっている!」
俺の中にあるのは、彼女を女性として守ってやりたいとの欲なのだろうか
それとも、1人の人としてなのか
まだはっきりしない以上、下手なことをしてはならない
ただ確かなことはある
薫さんに会いたくて堪らない気持ちだ
別れた後、すぐに顔を見たくなる
抱きしめたくなる
これが恋だと言うのなら、納得がいく
なぜなら、初めての感情だからだ
しかし、友人に対しても同じ感情を抱くことがあると言うならば
俺はお手上げだ