第2章 優しい約束、哀しい約束
こりゃ何て小動物だ?
上目遣いで見つめてくる
そりゃ俺がでけぇからなぁ。そうなるわけだが…
まさか他の男にもやってねぇだろうな?
「杏寿郎さんはいつがいい?」
って油断の隙もねぇじゃねぇか
煉獄にまでその顔をしやがる
「おい、薫。お前の意見を聞いてんだ。俺達は合わせられる。なぁ?煉獄」
何を苛立ってんだ
嫉妬してんのか?
俺だけを見ろってか?
ハッ、何言ってやがる
俺は…薫の友達だろ?
「そう…なの?それなら、梅雨の前がいいな」
薫は、ほんの一瞬顔に影を落としてそう言った
俺を見上げた時にはいつもの薫だ
俺の思い違いか?
「よし。ならすぐだな!煉獄も予定空けとけよ」
「うむ!楽しみだな!」
「ありがとう!」
だが俺は、この薫の一瞬の変化を見過ごしたことが
どこか引っ掛かり、暫く薫には内緒で見守ることに決めた
何もなけりゃそれでいいんだ
薫は草履を足に引っ掛けると、紫陽花に近寄り指で花弁を触っていた
小せぇ花がいくつも集まって一つの大きな花になる
あいつは、そんな紫陽花に憧れてんのかもしれねぇな
たった1人でここまで生きてきた薫だ
大人数に囲まれての温かい環境に憧れてたっておかしくはねぇ
でもよ、紫陽花ってのは…
「なぁ、煉獄。紫陽花っての葉に毒があるって知ってるか?」
煉獄は紫陽花をつついている薫から目を逸らすことなく、返事を返してきた
「ほう!それは初耳だ」
「綺麗のもんには毒があんだよ」
「薫さんもそうと言いたいのか?」
「時に俺達を惑わす毒になるかも…しれねぇよなぁ」
煉獄は、何が言いたい?って顔をして俺を見た
意味がわかんねぇならそれでいい
煉獄に薫は手に負えねぇ
俺だってどうだかわからねぇ
薫の危うさは闇だ
扱いを間違えりゃ、薫共々堕ちていく
「毒には慣れているだろう!血鬼術も似たようなものだ」
「お前なぁ…」
このくらい簡単に考えられる方が楽なのかもしれねぇな
これが煉獄のいいところだ
「俺にはよくわからんが、君が薫さんを特別な想いで見ていることはわかる」