第2章 優しい約束、哀しい約束
薫は、海に行きてぇと目を輝かせた
海なんて可愛いもんだ
煉獄は海の向こうじゃなけりゃと言ってたが…
俺なら海の向こうだろうが、地球の裏側だろうが連れてってやる
薫には、新しい世界を見せてやりてぇ
小さい箱に閉じ込められてきたこいつは、外の世界の光を浴びたら
どんなに綺麗な羽を羽ばたかせるだろうか
「ありがとう!天元さん、杏寿郎さん!」
こいつの笑顔は破壊力がある
俺の心臓を掴みにかかってくる
どうしたらこの笑顔を独り占めできる?
どうしたら俺だけを見てくれる?
いや、違ぇだろ
こいつは友達だ
俺がそう言ったんだ
こいつだって、そのつもりでいる
けどなぁ…距離感掴めねぇ薫はいつどんな風に距離を詰めてくるか予想がつかねぇ
そうなりゃ俺は何するか自分でもわかったもんじゃねぇ
「天元さん考えごと?」
知らずの内に眉間に力が入っていた俺の顔を覗き込んでくる薫
その顔がまた、無防備であぶねぇ
「宇髄、どうした?具合でも悪いのか?」
煉獄のでけぇ声
助かった
俺を現実に引き戻すにこいつのうるせぇ声はぴったりだ
「いや…、どこの海がいいかと思ってよ」
「天元さんもう色々考えてくれてるの?」
「当たり前だろ。俺がいいとこ連れてってやるからな。楽しみに待っとけよ」
「ありがと!!」
満面の笑みってのはこのことだろう
だが、俺は気づいちまったんだ
薫の喜ぶ顔に心臓を掴まれてるのは、どうやら俺だけじゃねぇってことに
「薫さん、梅雨の前に行きたいか?それとも夏本番がいいか?」
煉獄だ
煉獄も薫を友達として見てるわけじゃねぇ
薫に向ける顔は、俺が見たことがねぇくらい優しい顔だ
「天元さんと杏寿郎さんはいつがいい?私はいつでもいいよ!夏になってからでも待ってられるよ。天元さんと杏寿郎さん、2人が一緒に行ける日ならいつでも!」