第2章 優しい約束、哀しい約束
でも、いつかきっと煉獄さんみたいに胸を張って幸せって言える日がくるような気がしてならないんだ
この2人を見ていると、そう思えてくる
「なぁ薫、お前自分のこと嫌いか?」
「えっ…?」
天元さんは驚いた私を尻目に卵をかき混ぜながらそう訊いてきた
やっぱり天元さんも煉獄さんも人の心が読めるんじゃないかと思う
「どうして…そう思うの?」
哀しそうな目で私をちらっと見ると、また目線を卵に落として言った
「昔の俺と同じ目をしてるからだ」
天元さんも自分が嫌いだったの?
そんな風には微塵も思えないくらい自信家で、怖いものなんてないような目をしているのに…
「同じ…?天元さんが?」
「そうだ。俺は人様に言えねぇような生い立ちだ。良心に背く事を山ほどしてきた。…そんな自分を好きになんてなれっこねぇよ」
「でも…今は?」
天元さんは、同じく卵をかき混ぜながら真剣に話を聞いている煉獄さんを見た
すると、ひどくほっとしたように小さくため息をついた
「今は、俺を信じてくれ仲間がいるからな。俺は俺を認めてやることができた。薫もそうだ。俺たちがいる。だから心配すんな!」
天元さんは頭にポンと手を置いた
やっぱり大きな手
安心するんだ
この2人は私の知らないことをたくさん知ってる
友達と楽しく笑い合うことも、信頼し合うことも
でも、私にそれを教えようとしてくれてるんだ
天元さん、煉獄さんありがとう
臆病で新しい世界を見ようともしなかった私に力を分けてくれた
「ありがとう…天元さん、煉獄さん!」
「うむ!さてここから本気出していくぞ!宇髄、手を抜くでないぞ」
「ハッ!そりゃこっちのセリフだなぁ」
たかが卵焼き、されど卵焼き
大きな2人がどんな闘いをするのかと思えば、卵焼きの勝負なんて
どちらも真剣で、きっと私はどちらが美味しいかなんて決められないと思う
だって…
卵焼きができる前から、こんなにも美味しくて幸せな時間を2人からもらっているのだから