第2章 優しい約束、哀しい約束
薫さんから語られた事は、過去形だ
幼い彼女は頑張ったしかし…
「でもね…私が10歳の時…お母さんは…私を置いていっちゃった。庭で遊んでいるうちにお母さんいなくなって…裏山の木に…空になった体がぶら下がってたの」
俺は言葉を失った
鬼殺をしていると、母や父を失った幼い子を見る事は珍しいことではない
それを目の当たりにすることに慣れたわけではない
その度に胸は締め付けられ、助けられなかった現実に苛立ちを覚える
今、その時と同じ感情が俺の中に生まれている
悔しさと、虚しさ、何に対してかわからない苛立ちだ
鬼殺の時ならば鬼と言う明確な憎むべき対象がいる
しかし今の俺は何に対して腹を立てたらよいのか、わからずにいた
「君はそれを幼い頃から独りで抱えてきたのか?」
「……そう。私にはお母さんの他に誰も身内がいなかったから。でもね、お母さんが亡くなってどこで聞きつけたのか、父親の遣いの人が来て…子どもの私に代わってお母さんを弔ってくれたの。それから私に毎月決まった額のお金が送られてくるようになった。」
なんて酷な話だ
金を渡し責任をとっているつもりなのだろうか
幼い薫さんをたった1人で世に放り出し
遠くから見て助けた気でいたと言うのか!
「私にはそれが当たり前だったんだけど…子どもが1人で暮らしてるなんて可笑しい事だったのね。」
君はまた哀しい笑顔を向ける
「生きていてくれてありがとう」
俺の口から出た言葉はこれだった
生きることから逃げてもおかしくない生い立ちだ
それでも薫さんは、ここにいる
これからくる未来は、変えることができる
俺が変えてみせる
未来だけではない君の瞳の色を、哀の色から喜の色に
「私…生きててよかったの?こんな誰の為にもなれない私なのに…」
「当たり前だ!!なくていい命など存在しない!俺の前では命は皆平等だ。君の過去と今がどうであれ、俺には大切な命だ」
「煉獄さん、やっぱりあったかいね。手も…心も」