第2章 優しい約束、哀しい約束
「そこまでにしてもらおう!」
パシッと音がした
衝撃を覚悟して閉じた目を開けると、煉獄さんが奥さんの腕を止めてくれていた
「ちょっと!なんなの!あなた!」
「煉獄さん?どうして?」
「騒がしい声がしたのでな。頬が腫れている!手当をしなければだな!」
叩かれた痛みより、こんな恥ずかしいところを見られてしまったことの方が気になった
煉獄さんはきっと育ちのいい人だ
こんなことに巻き込まれちゃいけない人なんだ
「私は大丈夫です。これは私がしたことへの報いなんです」
「そうよ!この女狐が私の夫を寝取ったの!関係ない人は口を挟まないで!」
奥さんは煉獄さんに掴まれていない手を振りかぶって、また私の頬をめがけて振り下ろそうとしてきた
でも、やっぱり煉獄さんに止められてしまった
「奥さん。あなたのご主人は悪くないのか?責められるべきは薫さんだけなのか?」
「そうよ!夫はねぇ、この女に騙されたのよ!」
「男女の色恋と言うのは1人がその気になって成り立つものではないはずだが」
「だから騙されたって言ってるでしょ!!』
「騙されたか。ならば然るべきところに行かなければならないのではないか?もちろん、ご主人にも来てもらわねばならんな」
煉獄さんの言っていることはもっともだ
私1人で成り立つ関係じゃない
でも、やめられなかった私も相当悪い
「うるさいわね!夫は悪くないの!全部あの女が悪いのよ!!」
「確かに薫さんのしたことは褒められない。しかし、奥さん。あなたも手を出した。これがどう言うことかわかるな?あなたも不利になると言うことだ」
すると嘘のように静かになって、煉獄さんの手から奥さんの手が抜けていった
頬がじんじんと痛み出した
でも、この痛みは奥さんの心の痛みなんだ
「ごめんなさい。誠二さんとはもう会いません」
これしか言えなかった
足を引き摺るようにして帰っていった奥さんの背中は小さくて
私の罪の大きさを突きつけられたようだった
「薫さん、痛むであろう?だいぶ腫れているな」
煉獄さんは、俯く私を覗き込むと指先でそっと頬に触れてきた