第2章 優しい約束、哀しい約束
久しぶりに安心して寝入った気がする
温もりに包まれて知らないうちに眠っていたんだ
「天元さんが連れてきてくれたの…かな」
部屋を見渡すと、何ら変わりはない
でも、家に私とお母さん以外の人が入ったのは初めて
殺風景で淋しい部屋がちょっとだけ明るくなった気がする
これからまた一日が始まるんだ
また金曜日になれば、私はあの人のところへ行く
いつになったらこのぐるぐると同じように過ぎていく時間から抜け出せるのだろう
「あれ…私、こんな生活やめたいと思ってるの?」
こんなの初めてだ
この生活は当たり前だと思っていたし、真新しいものも望んでなかった
ただ、心の隙間を埋めるモノがあるなれそれでいい
あの人がだめになったら、また新しい人をみつければいいんだ
そう思っていたはずなんだ
でも……
「愛されたい…」
でも愛を知らない
愛なんて透明で見えない
特殊な能力のある人だけが色づいて見える特別なもの
誰にでも平等あるものなんかじゃない
愛って何?
愛が見えている人には何色に見えているの?
結局私には、見えないんだ
———いつまでも布団に入っていても、同じことを考えてしまう
居間に行くと卓の上に紫陽花が一輪、花瓶に差してあった
「あれ?この紫陽花…」
庭に咲いている紫陽花
誰に見てもらうわけでもないのに、育ててきた
力強く咲く花にいつしか私が慰められていた
ずっと、私を必要としてくれる存在が欲しいと思って育てていたのに
花はすごいと思う
こうやって人里離れた家の庭で誰にも褒めてもらえないのに
美しく咲くんだ
太陽をたっくさん浴びて
花瓶に生けたのは天元さんだと思う
ひっそりと、でも水々しく咲く紫陽花を見てくれている人がいるんだ
私はそんな紫陽花と自分を重ねてしまった
私のことも、天元さんや煉獄さんならちゃんと見てくれる
たった一輪の紫陽花に私の心は晴れやかだった
まるで光を浴びた紫陽花だ
天元さん知ってる?
青い紫陽花の花言葉は……
「辛抱強い愛情だよ」