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綾なす愛色【鬼滅の刃】

第2章 優しい約束、哀しい約束





さすがにこのままって訳にはいかねぇし、俺にとっちゃ大して高くねぇ木から飛び降りる

薫を抱いてるってだけで、慎重になってる自分に笑っちまう
俺はこいつの何になりてぇんだ?
時折顔をしかめる寝顔を安堵に満ちたものしてやりてぇ
だったらどうすればいい?

友達ってのは、どこまで踏み込める?
こいつの恐れの原因を突き止めてやっていいのか?
薫に会ってからと言うもの、俺は俺らしくねぇ


————結局薫は屋敷に着くまで目を覚まさなかった
少しでも、安心して眠っていられんなら俺は満足だ

人の気配のない屋敷の玄関は、人が暮らしてんのかと疑うくらい生活感がねぇ
それは玄関だけじゃねぇ
どの部屋もそうだ
物もなけりゃ、温もりもねぇ

ただ広い箱の中に、こいつは独り膝を抱えてうずくまってんだ

屋敷ってのは、多少なりとも思い出が刻まれてる
人の香り、体温、想い
ここには何にもねぇ
ただ季節に見合わねぇ冷たい空気が流れているだけだ


薫を布団に寝かせてやると、俺の体温から離れたせいか
自分を守るように膝を抱き込んで、小さく丸まった

その姿に胸を締め付けられるが、可愛いとも思っちまう

「はぁ…薫、お前俺に何したんだ?」

俺の問いかけに眠っている薫が答えるはずもなく、小さい寝息だけが部屋に響いた
耳のいい俺に寝息が時折乱れる様子がわかっちまう

恐らく、嫌な夢でもみてんだろう
夢の中でさえ、お前は独りなのか?

ため息を吐けば、薫が身動いだ
そんな辛そうな顔すんなら起こしちまうぞ?
俺の存在をその瞳に映してやりてぇ

「あぁー。本当起こしちまいそうだ」

そうなる前に退散しよう
薫の屋敷を出たものの、離れる気にもなれねぇ
せめて明るくなるまでは、近くにいてやろう

俺は屋根の上へと移動した
ここから周りを眺めると、こいつの屋敷が人里から離されていることがよくわかる

「薫を隠して何をしてぇってんだ」

まるでこいつを隠してぇみてぇに

苛立つ俺に庭の花の香りが風に乗って届いた
香りから花が多種に渡って植えられているだろうことがわかる

本当は薫の心は、この花達みてぇに色鮮やか彩られているのかもしれねぇな

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