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綾なす愛色【鬼滅の刃】

第2章 優しい約束、哀しい約束





薫に会ってからと言うもの、俺は気になって仕方ねぇ
何度屋敷に行ってみようとしたかわからねぇ

さすがに男1人で屋敷に押しかけるのはよくねぇ
何ならいい?
俺らしくもなくうじうじ考えてる内に、俺は薫と初めて会ったあの道に足を向けていた

鬼を一狩りした後の高揚感を抱えたまま、ちょっとやそっとじゃ気づかれねぇ高い木の上で下を見る
行き交う奴は次第に減ってくる

いよいよ誰も通らなくなった
だが今日は薫は現れねぇ
空振りか
せめて一目見て、屋敷に着くまで見守ることができりゃあいい
それにしても暗い夜道だ

薫は、この暗い道を1人で歩く
どんなに心細いか
女を夜道に1人歩かせる男の気が知れねぇ
考えただけで腹が立つ

薫は、よく言えば純粋
悪く言えば世間知らずだ
そこを野郎に漬け込まれたんだろう

ただ厄介なのが、薫はその野郎を必要としているんだろうことだ
或いは依存だ
無理に引き離しゃ、薫がぶっ壊れる

どうしたものか…

あれこれ考えてる内に結構な時間が経った
結局今夜は薫は来ないみてぇだ

俺は心底ほっとした
あいつが野郎に会う日じゃねぇってことだ

俺は安心したはずだ
だが、どこかで会えずに空振り終わった残念さを引き摺っていた

「どうしたもんかねぇ。お月さんよぉ」

地上よりいくらか近くなった月を見上げれば、でっけぇ口を開けて笑ってるような月が俺を見ていた

今日のところは引き上げるとするか
俺は元来た方向を辿り、闇に紛れた


————翌日の晩、俺はまたしてもここにいた
もし薫が現れて、あいつが月を眺めたら声を掛けよう
そう決めていた

今日はいくらか来る時間が昨晩より遅い
そのせいか人足はほとんどなく、千鳥足の酔っ払いがフラフラと歩いているだけだった

今日も空振りに終わるか?
いや、それが何よりじゃねぇか
そしたら屋敷に行ってみるか?
いや、卵焼きはどうした。手ぶらじゃねぇか

「はぁ…俺らしくもねぇ」

木にももたれかかるようにして座っていた体勢から、枝の上へしゃがみ込むような体勢へと変えた
どうも落ち着かねぇ

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