第2章 優しい約束、哀しい約束
なんて返事が返ってくるか怖かった
呆れられても仕方ないんだから
なんならぽいっとこの高さから落とされたって文句は言えない
天元さんの差し伸べてくれた手を、しっかり掴まずに曖昧か事をしているんだから
「そうか、わかった。出たくなったらいつでも言え。俺が力いっぱい引っ張ってやる」
天元さんの答えは思っていたものと全然違った
なんなら笑顔でそんな事を言う
「えっ…?怒らないの?」
「今まで当たり前だと思ってきたものを捨てるってのは相当な覚悟がいる。今、迷ったろ?それだけで大きな一歩じゃねぇか」
そうだ
迷ったんだ。一瞬だけでも天元さんに引き摺り出してもらおうと思った
「私は少しでも前に進もうとしているのかな」
自分で自分がわからない
私は自分が大嫌いだから
知りたくもないんだ
弱くて、透明人間みたいに誰からも必要とされない
だから、体だけでも必要としてくれているあの人から離れられないんだ
天元さんもそうだった?
形は違くても、当たり前を捨てるか悩んだ時があったの?
今は世界の広さを受け入れて、真っ直ぐにそれを見つめる
自分のやるべきこと、進むべき道を行く天元さんは
すごくかっこいい
「進む道ってのは、完全に間違ってる時と、間違っているようで遠回りしてるだけの時がある。薫、お前はどうだ?」
「私は…前者かもしれない…」
「そうか。そりゃ正直でよろしい。なら正しい道に戻りゃあいい」
「戻れるかな」
ぽつりと言った言葉に、天元さんは返事の代わりに頭をぽんぽんとしてくれた
「友達って、こんなこともしてくれるの?」
私の問いに目をまん丸くした後、天元さんはハハっと笑った
「そうだな!慰めんのは友達の役目だろ?楽しい時一緒に笑うだけじゃねぇ。悲しい時辛い時も分かち合うのが友達だ」
「友達って大変なんだ…」
感心してしまった
友達って言うのは思っていたよりもずっといいものだったから
「そうじゃねぇよ。友達ってのはそれを大変とか面倒くせぇとか思わねぇんだ。薫がどんなに喚いたり泣いたりしたって俺は面倒くせぇとは思わねぇ。それが友達だ」
「友達って素敵だね」
友達でそれなら、恋人はそれ以上なのかな
あの人は私の目を見ないから、私が悲しいとか楽しいとかわからないはず
分かち合うなんて夢のまた夢なんだ