第2章 優しい約束、哀しい約束
天元さんの手によって纏め上げられた髪は、しっかりと簪が挿されていて
まるでもう解くなと言われているようだった
「天元さん、髪を結うのまでできるなんて器用なんですね」
「髪結として遊郭に潜入したりしてたからなぁ」
潜入?
普通にさらっと驚くことを言ってくる天元さんに、目をぱちぱちさせるしかなかった
「それも鬼の関係で?」
「そそ。鬼退治」
鬼とはどんなものなのだろうか
背中にある物騒な物でないと退治できないような物なのだろうけど…
「鬼は、見たことがないのでピンとこなくて」
「はっ!それでいんだよ。”見たことがない”そう言える人が増えるように俺たちがいんだからな」
色々と突っ込みたいところはある
鬼退治って昔話の世界だと思っていたし、遊郭に潜入ってところもまたよくわからない
鬼を見たいことがない人を増やすことが天元さんのお仕事なのだろうか
”俺たち”とは煉獄さんのことだと言うことはわかる
もっと大勢いるのだろうか
「うん…わかったようなわからないような…」
「わかんなくていい。薫のことは俺が守ってやる」
私が夜出かけるのを知ってそこにいたのよね?
いつ通るかもわからないのに
「鬼退治ってそんな暇なの?」
「んなわけあるか!女は鬼にとってご馳走だ。お前を守ることも俺の仕事だ」
「ごめんなさい…お仕事増やして…」
わかってる
こんな夜に1人で出歩くなんて、どうかしてる
でも夜が怖い
ひとりぼっちであの広い家にいることに耐えられない
それならほんのひと時でも、誰かの体温を感じたい
「謝ってもらいてぇんじゃねぇんだ。どうしたら薫が夜出歩かなくて済むようになる?教えてくれ」
天元さんはしゃがみこんで私を下から見上げた
着物の袖を握り込んだ私の手を、優しく持って大きな手で包み込む
あの人触られても温まらなかった心が、不思議と温まってくる
私は何も肌を合わせたかったんじゃない
見て欲しかったんだ
私の目を
ちゃんと存在してるよって認めて欲しかった
天元さんは、真っ直ぐ私の目を見ている
「友達が欲しい…何でも話せて、どうでもいいことで笑える友達」