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綾なす愛色【鬼滅の刃】

第2章 優しい約束、哀しい約束



「天元だ」

「えっ?」

「宇髄天元」

そう呼べと言いたげに、名前を教えるとニッコリ笑って見せた
それより、気になることがいくつかある

「天元…さん」

「なんだ?」

天元さんは首を目一杯持ち上げないと見えないくらい高いところにいる
私なら怖くて気を失っちゃいそうなのに、不安定な枝の上でしゃがんでいた

「今日、卵焼きの日?」

「残念だが、今日はちげぇな」

「そっか。ならどうしてそこに?」

「綺麗な月と綺麗な女を見に来たんだよ」

瞬きする間にもう木の枝にいなくて、目の前に天元さん
次会うのは卵焼きの日だとばかり思っていたから、少し頭が混乱していた

「お世辞がお上手で。それにいい天気って、夜ですよ?」

つい笑ってしまうと、天元さんは長い腕を伸ばして空を指す
それを辿るように空に目を向ければ、満点の星空に月が嬉しそうに浮かんでいた

「あんなに星出てるじゃねぇか。月もにっこにこだ。なっ?いい天気だろ?」

「本当だ。いい天気」

星空を眺める私を天元さんは優しい顔して見てきて、私の手から簪を抜き取った
何となく、あの簪を触られるのは嫌だった
大切だからとかじゃない
私が人の道から外れている証拠みたいなものだから

でも背の高い天元さん私の手が届くはずもなく
私の手は空を掴むしかなかった
天元さんは簪を月明かりに照らしてまじまじみつめると
私の方に振り返って髪を掬った

「この簪、薫に似合わねぇな」

えっ?
私はずっとあの人に似合うと言われてきた
でも天元さんは、あの人と反対の事を言う

「そうかな…?」

「薫にはもっと自由なやつがいい。これじゃ金魚が閉じ込められてるみてぇだ」

そうだよ
だからそれを選んだの
それは私そのもの

まるで私の今いる場所は、私のいるべき場所じゃないって言ってるみたい

「そっか。もっといいやつにすればよかった」

天元さんは俯く私の髪を手際よく纏めて簪を挿す
あの人に解かれた髪を、天元さんが纏めてる
すること、言う事全部反対
なんだか可笑しくなっちゃった
あの人の言うことが全てだと思っていた私は、なんて狭い世界にいたんだろう

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