強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第3章 もっと近くで
バイクを直す万次郎について行くと、玄関を通らずに奥へ進む。
不思議に思っていると、万次郎が足を止めた。
「ここ、俺の部屋」
元々ガレージだったのを部屋にしたらしく、母屋とは別になっている。
「マイキーおかえり……って、えぇっ!?」
背後から声がして振り返ると、そこにいたのは学校の門の前で万次郎に抱きついていた女の子だった。
「ま、マイキーがっ……マイキーが女の子連れてきたっ!」
「何ぃっ!?」
更にその後ろから、黒髪の男の人が現れる。
「二人共うるせぇ……ごめんな」
「だ、大丈夫……」
走って来た二人からの興味津々の視線が、私に注がれる。
「兄貴の真一郎と、妹のエマな。で、こっちが俺の可愛い彼女の」
「は、初めましてっ!」
余計な紹介文が付け足されていたけど、それはスルーして私は二人に頭を下げる。
二人は緊張しながらのたどたどしい挨拶にも、にこやかに返してくれる。
複雑な関係だと聞いてはいたけど、仲はいいらしい。
「どうぞ、ゆっくりして行ってね。あ、部屋に飲み物持ってくよ」
「いや、いい。エロい事するから、来なくていい。邪魔されたくねぇし」
ほんわかした空気が、万次郎の一言で冷えた気がした。
固まる二人を他所に、万次郎は私の手を引いて歩き出した。半分引きずられるように、足を動かす私は二人に軽く頭を下げる。
「ねぇっ、万次郎、何であんな事っ……」
「別に悪い事じゃねぇし、本当の事じゃん」
何が駄目なのか分からないとでも言うように、不思議そうな顔でこちらを見る。
いい意味でも悪い意味でも、素直で真っ直ぐなのが、彼らしいと納得してしまう。
部屋に招き入れられ、部屋を見回す。
ガレージだったのが分かる、タイヤの跡などがあるシンプルな部屋。
「何部屋の隅で突っ立ってんの? こっち」
ソファーに促され、下にカバンを置くと、手首を掴んで引かれる。
万次郎の開かれた脚の間に座る形になり、背中に万次郎の体温を感じて心臓が早鐘を打つ。
「うおー……自分の部屋にがいると思うと……何か不思議な気分だ……」
「そ、そう? ていうか……何でこの体勢……んっ……」
「この方がのエロいうなじがよく見えるし」