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強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙

第1章 最強の男




幼い頃に亡くなった母に、毎日夜遅くまで仕事をする父。

小学校四年生と幼稚園に通う弟。

医者の父のおかげで生活に困る事はないけれど、やっぱり弟達に寂しい思いをさせてしまうのが、心苦しい。

出来るだけ二人と一緒にいるようにしようと心掛けてはいたのに、今日はだいぶ遅くなってしまった。

「……近道だけど……」

買い物袋を手に持って、暗くなった道を走っていると毎回差し掛かる公園が見える。

普段なら普通に通るけど、夜はあまり治安が良くないらしくあまり人がいない。

夜になると遠回りをする人がいるのも知っているし、私も出来るだけ通らないようにしている。

ただ、今日は出来るだけ早く帰りたい。

「……ちょっとくらいなら……いい、かな……」

走ればそこまで距離はないはずだから、中を突っ切る事にした。

緊張をしながら足に力を入れて、地面を蹴った。

もう少しで公園を抜けるという時、突然前に人影が現れて軽くぶつかってしまう。

「おっと、こんな時間に女の子が一人で何してんのー?」

「暗いのに危ないよ? お兄さん達が送ったげよっか?」

二人の男性が立ちはだかる。

「おーい、お前等何して……おー、ナニナニ? えっ!? 女の子だーっ! へー結構可愛いじゃん。ねぇねぇ、お兄さん達と遊んでく?」

「いいねぇー、楽しませてあげちゃうよー?」

仲間だろうか、人が増えた。

急いでいるのに、こう囲まれてしまっては私にはどうしようもない。

運が悪いと言おうか、私は身長がそこまで高くないのに、この人達は結構大きい。

逃げ場がなさすぎて、本当にヤバい。

「あ、あの……私、急いでっ……」

「ちょっとくらい大丈夫っしょ?」

しつこく絡まれ、腕を掴まれてしまった。頭の中に最悪の状態が過ぎる。

抵抗虚しく、引っ張られて行く。

―――ヴォンッ! ブンブンブンブンッ、ブロロロロッ……。

少し離れた場所で、数台のバイクの音が聞こえる。

その音は、明らかに数を増やして近づいてきている。男性達も気にしているようで、視線がそちらに向く。

これは、チャンスかもしれない。

掴まれている手を振り払い、走り出す。

「あっ、逃げたぞっ!」

「追いかけっこ? いいねぇー」

何がいいんだ。
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