第8章 星漿体①
傑の顔つきが真剣なものに変わる。
「彼女が目を覚ます前ならまだ情も移らない。
けれど3日間、生活を共にしたら彼女の声や口調、笑った顔や悲しむ顔、色々なものを目にする。」
ーーーーーお見通しなんだ。
傑は私の感情が揺れたのを見逃さなかった。
「3日後、彼女の前で涙を見せずに天元様の元へ送り届ける事が出来るかい?」
『・・・・私は、、、』
部屋が沈黙に包まれ、私は目を泳がせた。
少女の傍には世話係の黒井さんが寄り添い、目を伏せている。
彼女の事を全く知らない今ですら感情が揺さぶられているのは事実で…。
ーーーーーだけど。
私は床に膝をつき少女の手を握りしめると、キッと眉を吊り上げた。
『私は帰らないっ!!』
「ーーー。」
「・・・⁇」
「ククッ、、」
『ーーー正直、理子ちゃんの寝顔見たら同化なんてクソ喰らえって思った。』
私の隣で黒井さんが目を見張る。
『でも、理子ちゃんはきちんと現実を受け止めて今此処にいるのに、私が逃げ出せないじゃん…。』
「、、、」
理子ちゃんの手を握ったまま、私は黒井さんに向き直ると、
『彼女を襲ってくる奴らは全員、そこにいる2人が必ず仕留めてくれます。
だから私はせめて理子ちゃんの心が少しでも穏やかにいられるように、支えになりたいと思ってます。』
「ーーーーありがとう…ございます…」
黒井さんは肩を振るわせながら頭を下げた。
『ちょっ、頭なんて下げないでくださ、』「・・うるさいのー、、」
「あ。」
「お?」
「お嬢様っ⁉︎」
私の声が余程うるさかったのか、理子ちゃんは薄く目を開けながら眉を寄せていた。
『ーーーはじめまして、理子ちゃん。』
ここから怒涛の3日間が幕を開けた。