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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第8章 Rose








 天井に空いた穴から日が降り注いでいた。
 冬の気配を感じるキンと締まった風が吹き込んでいた。

 しかしそこにはやはり一輪の花もなかった。

 春に来たときは溢れんばかりの花が咲いていたのに。こうして見ると、その場所はひどくみすぼらしかった。


「ローズ」

「連れてきてくれてありがとう。リヴァイ」


 彼女は笑ってリヴァイを見上げる。
 あの時と同じように。


「日の当たるところに行こう」

「えぇ、おねがい」


 土を踏み締め歩く。ぽっかりと空いた穴の下に腰を下ろす。
 その地面だけが唯一乾いていた。
 ローズを隣に座らせて、そっと肩に頭をもたせかける。ローズは心地良さそうに微笑んだ。


「あったかい」

「あぁ、あったかいな」


 しばらく二人は黙っていた。
 それぞれに考えることがたくさんあった。それぞれに、かけたい言葉がたくさんあった。何から言えばいいのかわからないほどたくさん。


「あたし、死ぬのがとってもこわいの」

「うん」

「そういう、運命だってわかってるのに、こわくてたまらない」

「うん」

 
 ローズの体は微かに震えていた。
 強く、ローズを引き寄せる。


「……ずっと、俺がいるから」

「えぇ」

「だから、大丈夫。お前は一人じゃない」

「とっても、しあわせ」



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