第8章 Rose
残り1ヶ月をどう過ごすか。
リヴァイはその日一日、そのことだけを考えていた。
ローズの体調のことを考えると、酒場での仕事は辞めてほしい。だが彼女はあの仕事を楽しんでいるし、あまり勝手なことは言えない。
「うん。わかったわ。仕事は辞める」
夕食の時、それとなく言ってみると、意外にもローズは素直に頷いた。
思わず聞き返すと、リヴァイが何を考えているのかお見通しだとでも言うように微笑んだ。
「もちろん仕事は楽しいし、できれば続けたいけど、いつ倒れるかわからないから。できることならあたしはあなたのそばで倒れたいと思っているの」
「そうか」
「えぇ。それであなたの腕の中で息を引き取るの」
軽い調子でローズは言う。
なんと返せばいいのかわからなくて、リヴァイは顔をしかめた。
「あなたの隣で死なせてね」
リヴァイは一瞬悩み、やがて強い光をその目に宿して頷いた。
「わかった。お前が望むなら」
ローズは瞬きをして柔らかく笑った。安心しらような微笑みだった。
「ありがとう、リヴァイ」
「それに、お前がどこで倒れようともすぐに駆けつける。だから俺の知らないところで死ぬな」
リヴァイは手を伸ばし、ローズの目元に触れた。目のふちに浮かぶ涙を静かに拭う。ローズは鼻をすすって「約束する」と囁いた。