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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第8章 Rose



「花の、芽」


 その時、リヴァイの手のひらにドクンっと何かが動く気配が当たった。動いている。それは不規則に動いていた。
 まるで、卵の殻を破り、生まれ落ちようとする鳥のように。


「日に日にこの動きは大きくなっていく。土の下から出るには十分なくらい育っている。あたしには、それがわかるの」

「お前の養分を全て吸い取った時に、この花は咲くのか」

「えぇ。どんな花が咲くのかはわからないけれど、あたしの死と同時に芽吹くはずよ。母さんもそうだった」


 リヴァイはじっとローズの胸を見つめた。肉体を透かし、その奥にある心臓と、育っている花を見る。

 この花を根こそぎ奪い取ってしまいたかった。そうすればローズは死なないだろう。だが、体の奥にあるものをどうやって取り除くというのだ?
 そんなことをすればローズは死ぬ。どちらにせよ、死んでしまう。


「あと1ヶ月」


 囁く。その期間の短さを思い知る。
 残り1ヶ月で何ができるだろう。


「何もしなくていいのよ」


 リヴァイの心を読んだように、ローズは言った。


「前にも言ったと思うけど、あたしはあなたがそばにいてくれたらそれで」


 ローズは自分の手をそっとリヴァイの手に重ねる。
 目を伏せ、優しく言う。


「それで十分なの。あとは何もいらない」


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