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二人の航海者

第6章 想いは巡り会う


「良かったぞ、蒼音。貴様の優しさがあって……最も貴様らしく、相応しい曲だ。いちばん……好きだ」

その『好き』の中には、蒼音の曲と蒼音自身への想いが込められていた。前者だと取ったのだろう蒼音が、優しい。聖母の様なあの龍水の心を惹き付けてやまない包み込む笑顔で言った。

「なら、良かった」

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龍水と別れて帰路に着いた蒼音は、無事に家に辿り着くとマントを取った。蒼く深い海の色のドレスに、顕になった胸元のヒビを触りながら、囁く。

「あれは、君の歌だよ。私が、3700年間の時を経て君の為に編んだ、君だけの歌だ。——ちゃんと、また最後に会える歌だ」

そう誰にともなく告白しては、ふふ、と笑った。龍水の事だ。きっと『おい蒼音!なんだこの曲は!?誰が作詞した!?貴様か!』などと色々質問すると思い、他のアーティストに作詞して貰ってたけど未公開の曲、などと言い訳を考えていたが。不要だった。

《いちばん……好きだ》
いつもの『はっはーー!!』も無い、派手さも煌びやかさも無い。龍水らしくないが、最も言われて嬉しい言葉が蒼音の脳内を駆け巡った。

大丈夫。その言葉だけで、私はまた歩いてゆける。

そう微笑み、ストン、と。ベッドに横になり。3700年起き続けたお姫様は、太陽と慕う王子様の事を思いながら眠り姫となった。

******
後日。龍水は隠しオプションのドレスを蒼音がプレゼントしに行ったが、『そんな人が着た服を買う変態行為はしない。要らん!代わりに蒼音。貴様の歌の販売権利が欲しい!!』と言い出し。

千空がここぞとばかりに高値で権利を売りつけた。蒼音は『七海エンタテインメント』に正式に移籍、単独チケットだけで無くより大人数の、定員数のある普通の科学王国民でも手の届くクラスのライブチケットやレコードを販売した。

歌で使うレコードなど必要機材は千空達に頼み、欲の無かった蒼音はより良い音楽を作れる様にパーカッション、即ち打楽器の類いなど今の技術で出来る範囲内での楽器をカセキ達クラフトチームに頼んで購入した。自分が買わないと龍水が買いそうだからだ。
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