• テキストサイズ

二人の航海者

第6章 想いは巡り会う


数日後の晩、満月の夜。
龍水と蒼音は二人きりで他人に聞かれない為に用意されたライブ会場へ向かっていた。

「フフ、まさか龍水君が一曲どころか、ソッコーで三枚チケット買って隠しオプション解放するとは思わなかったな。おかげで諸々の準備に時間かかったよ。しかも値上げするなんて。君は本当に私の事になるとおかしくなるな?」

くすくすと笑いながら蒼音が歩く。隠しオプション付きなので、特典の特注品ライブ衣装を着込んでいる。それを隠すように大きなマントで身体を覆っていた。

「俺は貴様のスポンサーだぞ。まさか忘れたわけではあるまいな?あとおかしいのは貴様の方だ!!自分の歌を安売りするな!!」
「ハイハイ。スポンサーというよりはファン第一号じゃないか?昔自分で言ってたの、私は覚えてるぞ」
龍水に叱られつつ、分かったと適当に頷く蒼音。

「そうだ!!俺は貴様のファン第一号で、この新世界の単独ライブも俺が初の購入者だからな!!」
そうだねーと軽く流す蒼音に、龍水は少し不満げだ。

「おい蒼音。聞いているのか!?俺は貴様の全てが欲しいのだぞ!?」
「昔からそれ言ってたから。勝手に学校転入するわマンション買うわめちゃくちゃやってたし」
はっはーーーー!!あの程度は造作もない!と指鳴らしする龍水。

「龍水君は全くもって変わってないねえ。小学生の時はまだ君が世界を周ってないし一緒に居たからかな。あの頃がいちばん記憶あるんだよね~」
そう何気なく零す蒼音に、確かに貴様といちばん居たのはあの時期か、と龍水が納得する。

「アレ印象的だったな。小学校の演劇のやつ」
「蒼音が姫君の役だった劇だな!?何故か俺が悪役魔王を演らされた奴だ。主役が取れなかった理由がわからん!!」
いや単純に君のキャラが濃ゆくて演技無理だったから、と蒼音は平然としている。

「な……!確かに貴様の演技は一人だけ飛び抜けて上手いがな、俺の悪役も良かっただろう!?」
「ああ、私をさらって『はっはーー!俺はこの世界一の美女が欲しい!貴様には絶対に渡さんぞ!』って言ってたやつね。台本スルーでやるからあれには驚いたよ。全くもって君は嘘をついたり演技をするのは不得手だな?」
/ 117ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp