• テキストサイズ

二人の航海者

第3章 心のフィルム


「はっはーーー!そんなのは実質一択だ、決まっている!貴様の手料理が欲しい!!」

バッシィィイン!と派手に指鳴らしする龍水。めちゃくちゃ嬉しそうな弾けんばかりの笑顔だ。速攻で五つ星レストランをキャンセルしている。蒼音はごめんなさいレストランの従業員さん、と脳内で頭を下げた。

蒼音とフランソワが一緒に作るので間違ってはいないが。メインで調理するのはフランソワだ。自身の手料理と言えば大丈夫、と言われたのでプラス演技で何とかしたが……

「これでいいのでしょうか、フランソワさん」
ウキウキする龍水を置いて、蒼音が真顔で振り返る。

「はい。お手数お掛け致しました。流石は蒼音様でございます」
ぺこりと一礼するフランソワの姿に、ふと今まで未解決の事項が思い浮かんだ。

「龍水君に私とお見合いするように進言したのは、フランソワさんですね」
確信を持って言うと、頷くフランソワ。龍水は執事に多大なる信頼を置いているので、この人の言葉なら信用するのだろう。フランソワと手分けしてキッチンにて準備をする。が、また龍水がひょっこり顔を出す。

「おい蒼音!何を作るんだ!?トリュフかキャビアかフォアグラで」

「そんなの使わないよ、私は。【家庭料理】って言っただろう、龍水君。我が家は和食メインだ!私は君の嫁なんだろう。嫁の作る物にケチを付ける無粋なお婿さんか君は?」

「……!ああ、貴様は俺の嫁だ。嫁の料理なら俺は何だって欲しい!!」
とにかく【嫁】をキーワードにしたらバッシィィイン!!と指鳴らしをして引いた。龍水君、こんなに単純で大丈夫か?彼が学校で【俺の嫁】連呼するので真似ただけだが。七海財閥の今後が本気で心配だ。

「蒼音様は龍水様のご対応が手馴れておりますね」
微笑むフランソワ。そうですか?フランソワさんの方が歴がずっと長いですよ、と蒼音は謙遜しつつエプロンを着た。

「いえ。私はあくまでも龍水様の執事でございます。蒼音様は、龍水様の才能を的確に伸ばしておられます。私はそこまで口を出す立場ではございませんので」
/ 117ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp