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二人の航海者

第11章 【番外編】向日葵の君へ


「クソッ……!!蒼音との約束があったのに負けたぞ……!?」
「いや、龍水。軍師サマとの約束はいーけどな?それがありゃ勝てるって訳じゃねーぞ。あと本題はそっちじゃなくて航路のマジ話な」
 ウルシで顔を真っ赤に膨張させた千空にツッコまれつつ、福利厚生としてカジノやバー・フランソワが開店。船の停泊中に賭け事に皆が興ずるのを龍水が満足げに見ている中、白魚のような手がその背後からスっ……と伸びてきた。

「りゅーす〜い。負けちゃったね、ポーカー勝負。君、この私との約束を忘れてないか?」
 龍水の肩にポン、と手を置いた人物。蒼音の言葉に『アッ……』となる龍水とその場にいた人々。約束通り、彼女の言う事を何でも聞かなければならない。仕方が無いとはいえ、あの腹黒軍師の蒼音だ。絶対ろくでもない事を言い出すに決まっている。

「蒼音……!貴様、俺に何を頼むつもりだ?いや勿論受け入れぬ無粋な真似はしないぞ、『離婚』と『離縁』と『離別』と『破婚』以外でな!?」
「おぅよ、サラッと例外入れてどーすんだよ龍水……。気持ちは分かるけどよ」

 離婚関係のワードのみをずらりと口で並べる龍水。クロムや千空達、科学王国民が呆れる中。蒼音が身長を測るように右手を高く自身の限界まで挙げては手首を九十度に曲げてそのままフリーフォールを数回繰り返した。謎のジェスチャーだが、『屈め』という事か?龍水が船乗りのカンで察して膝を軽く曲げるも、蒼音の手の動きは止まない。

「違う龍水。もう少しだ、あと目を瞑れ」
「ん、ああ。ところでこれは何のつもりで……」

 龍水の言葉は、途中で遮られた。左の瞼の上に、瞬く間に消える柔い感触が与えられる。それが蒼音のキスだと気付いた瞬間、龍水は両目をバチンと開けた。ちょうど目線の合った愛しい海の色の瞳をした女性がふふ、と小声を出して笑う。
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