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二人の航海者

第11章 【番外編】向日葵の君へ


 七海龍水と六道院蒼音がスピード結婚式を挙げた翌日。科学王国は記者の北東西 南など新たな船員を迎え、アメリカへの東回り航路に挑んでいたが——科学王国のツートップである、千空と龍水が互いに睨みを利かせていた。なんだなんだ?と蒼音達が近付けば……

「アメリカまで70日だッ!」
 船員の負担を考慮した現実的な『等角航路』の日数を提唱する龍水に。
 
「アメリカまで40日だ!」
 科学的な側面を踏まえ、GPSを駆使した最短ルートである『大圏航路』の日数を提唱する千空。二人の意見が食い違い、寄ってポーカーで勝負する事になった。

 わざわざスーツの正装に着替えてまで派手に対決する二人。更に龍水にはゲンが、千空にはコハクが。両チームがタッグとなり異色の勝負に挑む。何方が勝つのかと皆が賭け事をする最中、龍水は『ん?』と後ろに立つディーラーの姿に気付いた。

 自らの妻、蒼音である。カジノの人が着ているかっちりとしたシャツにベスト、蝶ネクタイを締めて黒のスラックスを履いていた。動きやすいように白銀のロングヘアを後ろで低く結わえている。無言で準備を進める敵チームの嫁の姿を見た千空が不吉な笑みを浮かべた。

「ククク……おーおー?テメーの嫁は何方にも着かないらしいな、龍水?」
 蒼音の謎の役割配分に乗じて煽りに煽る千空。黙々と使用するカードやチップを準備するディーラー・蒼音に向かって龍水がクワッ!!と三白眼をかっぴらき叫ぶ。

「おい蒼音!貴様、昨日俺と結婚した新婦だろう?新婚ホヤホヤだ!!何故ディーラーの真似事などしている、その役目は羽京に頼んだ筈だぞ」
 だが蒼音はしらっとした顔でカードをシャッシャッと慣れた手付きで切りつつ答えた。

「新婚云々は関係ないぞ、龍水君。私は単に【軍師】として何方に着くべきかを考えた末に羽京君に役目を変わってもらい、ここに居るだけだ。人材を大事にする君の考え方も分かるが、千空君の科学の現実的な話も分かる。ここで航路を変えなければ大幅なタイムロスだ。寄って、両者共に大事な点を抑えているからイーブンだ。軍師として軍配を上げる役目は貰おう」

「な、なんだと蒼音…………!?」
 勝負前なのに顔面蒼白になりながら右手を口元でガガガガと微振動させる龍水。更には。
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