第27章 あたりまえのことがあたりまえじゃないこと~バレンタイン~
「…なんでもない。」
「なんでもなくないだろ。話すまで離さないから。」
そう言われて後ろから優しく包み込まれた。
「…。今日何の日か知ってるよね?」
「バレンタインだね。」
「…。カルマの中では当たり前だと思ってる?」
「…。ごめん、気づかなくて。」
私は溢れる涙で言葉を一つ一つ探しながらチョコをどう渡そうか迷った。
「が当たり前の存在になっていくことに最近ちゃんと好きを伝えられてなかった。ごめん。受験を言い訳にしてのこと後回しにして。俺はの気持ちが欲しい。」
「ばか、気づくの遅いよ。」
私はそう言ってカバンの中からチョコを取り出した。
「これ、今日ずっと渡したかった。」
「うん。ありがとう。」
カルマはチョコを受け取ると私の手を掴んでそのまま歩き出した。
「帰ろっか。」
私はカルマの手をぎゅっと握り二人で帰路についた。その日はカルマの家に泊まったことは言うまでもない。