第13章 自分にしか出来ないこと
トレーボルはまじまじとシオンを見ていた。
「んね〜もしかしてさっき自分のことが分からなかったのは、昔の薬の副作用じゃない?」
「…薬?」
「まぁ、お前は覚えてるわけねえよな。」
(覚えてない…?)
一体いつのことだろうと考えた。
思い出すのはコラソンの大きな優しい背中。
困ったような笑顔。
ベビー5達と遊んでいた時、死にかけた時。
ドフラミンゴに褒められた時もあったが、ドフラミンゴに褒められても全く嬉しくなかった。
「べへへ、お前が望んで飲んだ薬を忘れるなんてな。」
「…どう、いう…こと?」
「ほんとに、忘れてるんだな。こいつはおもしれぇ!」
つかつかと、子どもが歩いてくる音がした。
「トレーボル?何してるの。
さっきの?」
「べへへ、あぁ。俺たちの知り合いだった。
このことは若様にも伝えようと思うんだ。」
「若に?」
「あぁ。電伝虫はどこにやったかなぁ。」
トレーボルがシオンに背中を見せた。
体を捻らせベタベタとした粘液から脱出して走り出そうとした。
パン
シュガーの手が体に触れた瞬間、ぽんと音を立ててシオンは気づくとおもちゃになっていた。
そのまま海水へと落ちていった。