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記憶が亡くなる前に

第12章 命懸けの単独行動


コロシアムは盛り上がっていたため、それに気を取られていたからか警備も薄かった。
すんなり入れたコロシアムには、身も心もボロボロにされた剣士達が檻の中で包帯に巻かれている。
辺りをキョロキョロしていると、檻の中から1人の剣士が声をかけてきた。

「あんた、このコロシアムにエントリーしたやつかい?」

「え?え…えぇ。」

「メラメラの実を狙ってか?」

「メラメラの実?
それってあの火拳のエースの?」

目の前で死ぬところは見ていた。
弟を庇い体を焼き貫かれた、あの火拳のエース。

「聞いてなかったのか?
それでこの大会に?」

剣士は唖然としていた。
余所者がこのコロシアムに入るにはメラメラの実の理由が濃厚だが、それを知らずに入るとなると対価があまりにも大きすぎる。

「ご、ごめんなさい。おしゃべりしてる暇はないから。
それより、この大会で脱落した人達って見てないですか?
知り合いがいたはずなんですけど…。」

その言葉に剣士達は目を逸らした。

「分からない。ここは、勝つことしか許されないところだからな…。
負けたやつのその後を見たやつはいない。」

シオンはそう…と悲しい声を出して俯いた。
その直後にコロシアムから歓声が響く。
どうやら、ルーシーという無名剣闘士が会場を湧かせているようだった。
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