第8章 この感情も記憶も忘れないために
センゴクはそんな様子のシオンにため息をつく。
「心配かけまいとしてるのは分かるが…。
私としても今後が心配なんだ。私はそろそろこの座を今の大将に任せようと思ってな。」
「え…?」
「いや、まだ少し先の話だ。
私がここの座を下りた時のことの話だ。
シオンには大変な思いをさせるかもしれないからな。
その病気のことも理解ある者の下についてもらいたいんだ。だから…。」
センゴクは1つの小さめのノートを渡した。
「これは?」
「シオンは航海日誌を書いてもらいたい。
これはドクターベガパンクからの提案でもあるんだ。
海馬にも異常が見つからなかったらしいからな。
原因が分からないのなら普段からものを書いて留めてもらいたい。
何か分かるかもしれないからな。」
「はぁ…。配属の方は?」
「それはこれから決める。しばらくは休みなさい。
これは指令だ。いいな?」
「わ…分かりました。」
シオンは会釈してから部屋を出た。
入れ替えで、ほかの海兵が入ってきた。
「センゴクさん、あの子に思入れでもあるんですか?」
「さてね…。これだけは言えるのはもう、大切な我が部下を失いたくないだけだ。」
センゴクの目に涙がうっすら浮かんでいた。