第1章 未知の味
「ラキ!ら、……」
レグナは言葉を失った。
頬からダラダラと血を流すピュアヒューマンを抱え、
肩や背中には他の吸血鬼の子供がぶら下がっている巨体の異形。
それが私の方を向いた。
「パパ」
不安が絶望へと変わっていく。
ピュアヒューマンは血が止まらないようだが吸血鬼たちに大丈夫、と声をかけている。
子供たちも遊びの延長のような態度だった。
ラキだけが巨体に似合わない静けさを保っている。
「悪い子でごめんなさい」
レグナは何も言えなかった。ザワザワと人だかりが出来る。
口々に「人間だ……」という声がして広がり、遅れて司祭が現れる。
「教会で治療するにはラキが入れないかもしれないね」
「秘密基地いく?」
「そうだね。……レグナ、君も来るだろう?」
頭が真っ白だった。
「来なさい」と腕を引かれ、ようやく歩みを進める。
司祭はやけに落ち着いていて、
ピュアヒューマンも子供達も落ち着いていて。
レグナとラキだけが違っていた。