第2章 はじまり
一夫は当時のことを思い出していたーーー 半年しか経っていないがカホは成瀬の家のものだと踏ん反り返りもせずメイド達にも優しくなおかつ自分で稼ぎたいと仕事もはじめた。驚いたのはより一層大人びて美しくなり成瀬の家にふさわしい跡取りとなった
朝食を済ませると一夫はカホに「カホきみは幾つになったんだね?」と尋ねた
「20になりました」と答えた一夫は指と指を交差させ少し考える素振りを見せ遠慮がちに
「君にお見合いの話が出ているんだがどうだね?」とカホに思い切った質問を投げた
カホは目を見開き少し俯き加減でしばらく黙っていた長い沈黙が続く。ーーーー
時計の針の音だけが部屋に響いた
どれくらいそうしていただろう針の音と同時に顔をあげ「縁談を受けましょうお父様」と凜とした表情で一夫に言葉を投げた