第6章 好きな人。
『めっ、恵君⁈』
突然声を掛けられ、驚きのあまり布団を床に落としてしまった。
「すいません…驚かせて。
ドアんとこで一応声掛けたんすけど。」
後ろから恵君が腕を伸ばし布団を拾い上げる。
『あっ、、ホント?ごめんね、ぼんやりしてた。』
まだバクバクと音を立てる心臓を抑えながら、平然を装うようにヘラっと笑ってみせた。
けれど、恵君はじっと私を見つめたまま押し黙っている。
『・・・・どうかした?』
首を傾けると、恵君は少し視線を彷徨わせた後、徐ろに口を開いた。
「ーーーー最初、あなたを見ていると無性に腹が立ちました。」
『えっ、、えぇ〜、、、』
予想外の言葉を投げられ、ショックを受ける私をよそに恵君はさらに話しを続ける。
「おどおどして弱いとことか、真面目で優等生ぶってるとことか、、、見ててイラついてました。
正直、乙骨先輩や2年の先輩達が大事に想ってんのも理解出来なかったし、五条先生が何ヶ月も費やしてあなたを探したっていうのを聞いて馬鹿ばかしい、とさえ思ってました。」
ば、、バカバカしい、、、。
恵君のあまりのハッキリとした物言いに、私はショックを通り越して清々しさえ感じていた。
『うんうん、そうだよね…私もそう思う。恵君の言う通りだと思うよ?』
私は眉を下げ、ごめんね?と笑いながら恵君の顔を見上げると、
「マジで、あなたといると調子が狂うんですよ。」
真剣な眼差しと視線が重なった。
『・・・恵、、くん?』
バサッ
布団が床に落ち、乾いた音が聞こえたと同時、
私は恵君の腕の中に閉じ込められた。