第6章 好きな人。
「ーー失礼します…」
小さく呟き、壁にあるスイッチを押し電気を点けた。
明かりがつき部屋の中をぐるりと見渡す。
かれこれ数ヶ月、主のいない部屋はガランとしていて静かだ。
物が少ないのもあるけど、きちんと整理整頓しているところが憂太君らしいな…。
『・・・・。』
何だか急に寂しさが押し寄せてきてそれを振り払うように首を振った。
ダメダメっ!感傷に浸りに来たんじゃない‼︎
布団を取りに来たんだから!
そう自分に言い聞かせクローゼットを開けた。
ーーーーけど、
『〜〜ッ。』
クローゼットを開けた瞬間、僅かに憂太君の香りが鼻を掠めキュッと胸が締め付けられた。
込み上げてくるものをぐっと抑え下唇を噛む。
一年前に芽生えた淡い恋心はここを去った時に断ち切った。
もうあの頃の私はいない。
開きかけそうになる蓋を閉め、再び心の奥底へと沈める。
ーーーーこれで、いい。
気持ちを落ち着かせるように息を吐き、気持ちを切り替えると棚の上にある布団へと手を伸ばした。
「ーーーさん。」
突然後ろから名前を呼ばれ、肩がビクッと震えた。