第8章 異変
街の一角にある豪華な洋風の建物。
その中で数人の大人が、机を囲んで談笑している。
「まぁ本当に利発そうな子ですこと」
大人達はある子どもについて話していた。
家の主人が養子に迎えいれたという子どもの話だった。
主人はその子をたいそう気に入っていて、会社のあとを継がせるとまで言う。
「ただ皮膚の病にかかっていて、昼間は外に出られないんだ」
主人は告げる。
昼間は外に出られない。
まるで、鬼のように。
「御報告に参りました」
その建物の二階。
たくさんの本が並ぶ部屋にいた齢十ほどの子どもに声をかけるのは、人ならざる者の猗窩座。
「無惨様」
子どもはそう呼ばれると見ていた本から顔を上げ、窓に現れた猗窩座を見る。
「例のものは見つけたか」
子どもの正体は鬼舞辻無惨だった。
「存在は確認できませんでしたが、一つ気になった事が」
「なんだ」
「炎の柱と対峙した後に来たもう一人の柱が使う技に、彼岸花という技がありました。そしてそこから見えた覇気は、青い炎のようでした」
猗窩座の言葉に鬼舞辻は眉を顰める。
「なにか関係があるかもしれない故、御報告致します」
「猗窩座、私は不確定な情報は嫌いだ。そいつについてはその兄が鬼になっている。私の方で調べられる」
鬼舞辻が段々と不機嫌になっていくのを猗窩座は肌で感じていく。
「それよりなんだ、そいつを含めあと四人、その場には鬼狩りが居たはずだ。柱を一人殺したからなんだ、何故全員始末してこなかった」
鬼舞辻の怒りで猗窩座の肌にヒビが入り、血が滲む。
空気が重くなり、猗窩座はなにも言う事ができなかった。
猗窩座の報告が終わり、少し経つと、もう一人の鬼がその部屋に現れた。
「お呼びでしょうか、無惨様」
名前の兄だった。
「お前の弟は彼岸花という技を使うらしいな」
答えられない。
天の呼吸については、受け継がなかったため、その殆どを知らない。
「知らないのか。残念だ」
「申し訳ありません、ただ、先程弟の血を吸って参りました。血があれば何かわかるかもっ、ッぐァ……」
兄が言い終わる前に、無惨は兄の眉間に腕を突き刺していた。
頭が抉れ、兄の呻き声が盛れた。
鬼舞辻は兄の血を吸い取ると、吐き捨てるように言う。
「下がれ」