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日の守護者【鬼滅の刃】

第2章 歯車が動き出す


最終選別の日から十五日後。
名前は狭霧山へと足を運んでいた。
傍らには風鈴を笠に何個も吊るし、ひょっとこの面を着けた男が居た。


「ったくよぉ、護衛なんて要らねぇんだよなぁ。刀を届けに行くだけだってのに」


ひょっとこ面の男は名前に向かって小言を吐き出す。
名前は何度も繰り返される小言を受け流しながら苦笑いを浮かべる。


『長旅で夜に鬼に襲われたらいけませんので』


というのは建前であり、産屋敷が名前を炭治郎と合わせるために鋼鐵塚の持つ刀の護衛任務として向かわせたのだった。


風鈴の音で少し耳が麻痺しているような感覚の中、狭霧山の麓の小さな小屋が見えてきた。
その小屋の入口には先日見た姿がある。

竈門炭治郎だ。



炭治郎も名前の姿を見てはっとしたような表情をするが、それよりも名前の横を歩く男に口が空いてしまっていた。


「ふ、風鈴…」

炭治郎は戸惑いながら独り言のように呟いた。

「俺は鋼鐵塚という者だ。竈門炭治郎の刀を打った者だ」
「竈門炭治郎は俺です、中へどうぞ!」
「これが日輪刀だ」
「あの…どうぞ中へ」
「俺が打った刀だ」
「お茶を入れますよ」

鋼鐵塚は炭治郎の話を聞かず、家の外にもかかわらず背負っていた長細い木箱を下ろすとその場で開け始めた。
しばらく鋼鐵塚は炭治郎の言葉を無視して日輪刀の説明をしていたが、ふと炭治郎の顔を見ると驚いた声を出した。


「ああ、お前、赫灼の子かぁ。こりゃあ縁起がいいなぁ」
「いや、俺は炭十郎と葵枝の子です」
「そういう意味じゃねぇ」


赫灼の子。
名前もいつか父親から聞かされたことがある。
名前自身も瞳が微かだが赤みがかっているが炭治郎程ではない。
惜しかったな、と父親に言われて、その時はよく意味がわからなかった。


「髪の毛と目ん玉が赤みがかっているだろう、火仕事をする家はそういう子が生まれると縁起がいいって喜ぶんだぜぇ」


最終選別の時はあまり気にならなかったが、確かに炭治郎は髪の毛と目が赤みがかっていた。


「こりゃあ刀も赤くなるかもしれんぞぉ」



鋼鐵塚の期待に胸を高ならせたような声とは裏腹に名前は一つの確証にも似た感覚があった。




この刀は……黒色になる、と。
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