第4章 甘い匂い(相澤消太)
相澤side
彼女から好意を向けられているのは、結構序盤から気づいていたし、好かれることはいやなことではなかった
だが、別に俺は特別好きという感情はなかったし、誰かに対して付き合いたいという気持ちもなかった
いつも通り、本の貸出の手続きや、戻ってきた本の片付け、本棚の整理などを分担して行っていく
「よ、いしょっと、!」
声が聞こえ、横をちらりと見ると、菊川は返却された本を10冊ほど一度に抱え、本棚に戻しに行こうとしている
「危ないぞ、せめて半分ずつにしろよ」
本が揺れているのを見て、危険だと感じた俺は、本を抱えた菊川のもとへ行こうとする
「大丈夫ですよ~!心配しないでください!」
と笑顔で本棚へ向かおうとする菊川を、引き留めようと手を伸ばすと
「きゃっ、!?」
と小さく叫び、転びそうになる
「あ、!、、、ぶな」
俺が転びそうになった菊川の腰を、つかみ引き寄せ、支える
「、、っ!せ、んぱ、、、」
バックハグのような体制に驚きと恥ずかしさのあまり、一気に体が熱くなっていく彼女
身長は俺のほうが高いとはいえど、体制により今までふわっと香っていただけの髪の香りが
、ダイレクトにくる
(、、やば、、)
思春期の男子には、抱き寄せたときの感触とにおいの刺激はあまりにも強すぎて、グッとくるものを抑え、すぐに離れる
「すまん、、大丈夫か、、?」
焦りが伝わらないように、平然を装って彼女に問いかける
しばらく、沈黙が続いて、、やっと口を開いた彼女は
「相澤せんぱい、、わたし、、、
相澤先輩のこと、、すきです、。」
振り返り、真っ赤な顔をして、必死に伝えてくる
でも、どうしたらいいのかわからなかった俺は、
「ごめん」
とだけ言って、委員の仕事に取り組んだ