第15章 あと少し(黒尾鉄朗)
香澄side
私は、普通の会社で普通に働いて、普通にこのまま彼氏と結婚すると思ってた
今のいままでは、、。
「え、」
「、、え、?」
ドアを開けたら抱き合ってる男女
その男は確か私と付き合っているはずのひと、、
「な、にして、」
今日は彼と会う予定だった日
サプライズで登場しようと思ったら、まさかの展開
「香澄、、!?なんでここに!?いや、てか、これはちがくて、!」
青ざめた表情で、女を突き飛ばしこちらへと向かってくる男
心臓がバクバクなって、頭ん中真っ白で、ショックとか悲しいとか怒りとかそんなん全部通り越して、、
「、、きもちわる、、」
そう言って、合鍵を部屋に投げ、何も話すことなくドアを閉めてついさっきまでいた駅へと歩き出した
帰りのチケットを買って、そのままタイミングよく来た電車に乗る
席に座って、流れる景色を見ていると、呼吸がしずらくなった
「、、っ、、、ふっ、」
(私、泣いてる)
よく分からないぐちゃぐちゃした感情に襲われて、自分が住む町へと帰った
(、あ、、雨、)
最寄りの駅をおりて、空を見上げると先ほどまでいた駅で見た星空とは違って、大粒の雨が音を立てるくらい降っている
(ああ、、もうどうでもいい、、)
濡れながら帰っていると、いつも黒尾と一緒にしゃべっていた公園の横を通る
(まだ、、帰りたくない、)
そう思って、ひとり公園に立ち尽くし雨に濡れていると
「何してんだよ」
突然後ろから聞こえた声
(この声は、、)
「黒尾、、ほっといて、、」
「ほっとけるわけないでしょ」
「だから、っ!」
引っ張られた腕
温かく包まれ、抱きしめられているのに気づくのに時間がかかる
「、なっ、、なに、」
「ちょっと、黙れよ、?」
さらにぎゅ、と力を込められ、黒尾の温もりを感じ、自分の中でまた何かが込み上げてきた
「、っ、くっ、、ふぅ、、」
次々と込み上げるそれに息苦しくて、息を吸おうと必死になる私の背中を、黒尾トントンと優しく叩いてなでる