第14章 この愛が歪んだ呪いになる前に(夏油傑)
香澄side
1週間ほど休んで、覚悟を決めたある晩
私は彼を呼び出した
「久しぶりだね、香澄」
「うん」
「すごく、会いたかった」
彼は、私の顔に手を伸ばし頬を優しくなでる
私はその手をそっと払う
が、その手はそのまま彼の手に包まれた
(言うんだ、、ちゃんと、)
ぐっと力を込めて、重たい口を開く
「ごめん、、ちょっと、距離置きたい、、」
(、、言った!)
少しだけ私を握る彼の手に力が入った
その一瞬が終わると、彼はそっと私の手を離す
「、ごめん、、」
それだけ言って、私は後ろを向いて歩きだす
(まだだ、、まだ、泣くな、わたし、、!)
部屋に入って、わたしはそのまま崩れ落ちた
「くっ、、、ふぅ、、、、うう、、っ」
ぽろぽろと、とめどなく流れる涙を、抑えることはしない
(明日からは、、付き合うまでの私たちに、、戻るために)
・・・
次の日から、傑はあまり学校に来なくなった
私を避けているのか、傑を包む雰囲気が少し変わったせいなのか、わからない
でも、学校にきている間、時折考え込む傑を見かける
(好きな気持ちは変わんないもんね~)
あきらめることをあきらめた私は、ひっそりと傑のことを思い続けている
悟と硝子は、私の気持ちにも気付いている、と思う
でも、こんなことばかり言ってられない
この夏はいつもより呪霊が多く、夏祭りの話題何てこれっぽっちを出ないくらいには忙しい
そして、後輩・灰原くんが亡くなって、七海くんも少し荒れている
今日も彼は学校に来なかった
「さ、今日も帰るか~」
と、ペットボトルを振り回しながら、隣で悟が歩き出す
「危ないよ、悟」
「大丈夫~」
いつも通り、何気ない会話をしていると、前から夜蛾先生が歩いてきて、衝撃的な言葉を放った
悟の持っていたペットボトルが床に転がって、バシャバシャと水音を立てている
「は?」
「、、え?」
テンポがずれて、私たちの抜けた声が廊下に通りぬけた