第14章 この愛が歪んだ呪いになる前に(夏油傑)
香澄side
(また出直そう、、)
そう思って振り返ると、そこには
「やあ、香澄」
彼がいた
だるそうに、首の後ろに手を当て、こちらへと向かってくる
「す、ぐる、、?」
いつも通り、穏やかに笑っている、が
(なにか、違う、天元様の件で何が、、)
「香澄、?」
私に近づき、こちらへと手を伸ばす彼からふわり、と、甘い匂いが鼻をかすめる
「っ、!!」
ぱしっ
伸ばされた手をはじき、彼のことをよく見ると首元に赤い跡が何個かある
「それ、、なに?」
想像以上の低い声が、私の口から出た
「ん、?あー、、」
「私たち付き合ってるんだよね?」
「そうだね」
「なにしたか、わかってるの?」
悲しさや、呆れやいろんなものがぐちゃぐちゃろ、腹の中を回っている
でも、1番最初に出てきたのは、怒りだった
そう思った時には、すでに拳に呪力を込めて、彼へと殴り掛かっていた
「っと、落ち着くんだ、香澄」
あっさり止められ、その次には足を振り上げ、かかと落としをしようとするが、あっさりかわされる
「なにが、!っ、、!好きなんて、、噓つき、!!」
「嘘じゃないよ、本当のことだ」
「じゃあ、なんでこんな、こと、、!!」
あふれる涙で、滲む世界
動くたび鼻につく甘ったるい匂いに、現実がいやでも突きつけられる
「香澄、「やめて、!名前、もう呼ばないで」
私は抑えられた腕を振り払い、彼の顔をもう振り返ることなく走り去った
・・・
そのあと、私はしばらく授業を休んだ
悟も硝子も、何度も連絡してきたし、何度も部屋を訪れてきた
でも、、
どうしても彼に会う気にはなれなかった
会えない、会いたくない
ぐるぐると考えが回っている
でも、このままではいけないこともちゃんとわかっていた
私が出した答えは、、
「傑、ちょっといいかな、、」