第10章 愛という名の呪い(五条悟)
五条side
今日も彼女に会いにいく
(あぁ、、早く、)
♪〜
電話が鳴り、表示された名前に嫌気が差す
「はい、なに伊地知
もう僕、今日の仕事終わったんだけど、くだらないことだったら祓うよ?」
『ご、五条さん、!夜蛾さんが、』ブチッ
(ふぅ、あぶね〜、その人の名前の時はほんとに面倒なことが多い、、)
「却下却下〜、いこいこ〜」
彼女の働く会社へと足を進める、あえて歩きで
やっと会える愛しい人の姿を思い返して、心が暖かくなるのを感じる
僕が彼女に初めて会ったのは、彼女が大学4年の秋頃だったか、、
母親が呪い殺されたっていうのに、彼女の目は驚くほどに冷静だった
その時の僕は、白い布を目に巻くのを始めてすぐで、ちょっとの違和感を感じながら任務に当たってたっけ、、
「きみ、大丈夫、?」
母親の死体をボーッと見つめる彼女に声をかける
「あ、はい」
ショックすぎてなにも感じなくなったのか、と思って声をかけたが、こちらを向いて返事をする彼女の顔はむしろ明るかったように思う
「え、悲しんでるのかと思ってた」
「あ、え、いや、、」
困ったように小さく笑顔を見せる彼女
すると部屋のドアが空いて、警察が彼女を呼んだ
「菊川さん、ちょっといいかな」
「はい、」
そう言って一緒に部屋を出ていった
初めて会った時のエピソードといえばそれくらい
そのあと彼女に会うことなんかないし、印象は強かったけど思い出すことはなかった
そして、3年経ち、伊地知と呪霊の説明を聞きながら歩いていると、すごい呪いを連れた女の子を見かけた
思わず声をかけたその子が、今僕が愛しくてたまらない彼女だった
「きみ、呪われてるよ?」
「、は、、?」
(すごい警戒心、、)
僕のことを見上げると、あ、と何か思い出したような表情になる彼女
「ん、?」
「い、いや、以前母のことでお世話になった方だ、と思って、」
そこで昔の記憶を思い出す
「あ、菊川香澄ちゃん?」
「はい、そうです、、」
ペコリと頭を下げて、頭を上げて、3年前より伸びた髪の毛を耳にかけ、こちらを見上げるその姿に、トクン、と胸が鳴るのが分かった