第8章 新しい幸せ(岩泉一)
香澄side
怒りなのか悲しみなのかわからない感情で、手が震えるのを抑える
「そんなん、前から言ってんべ、」
歩き出した足を止め、振り返ってそういうはじめ
私はその空気に耐えられず、俯いてしまう
「あの子たちとは、いつも一緒にいれるのにね」
「、は、、?」
「私たちって、、付き合ってる意味、あるのかな、?」
「香澄、なにいって、」
「今日も、、私とは一緒に歩けないって言ったのに、あの子たちとは一緒に国際通り歩いてるじゃん、、」
泣きそうになるのを抑え、自分の気持ちを伝える
「それは、あいつらが及川ファンなだけで、、」
「違うよ、はじめのこと好きな子もいるんだよ、、」
「あいつらから聞いたのかよ」
「そういう噂があるの、、」
「お前、そういうの簡単に信じるのよくないべ」
トドメの一発をかますはじめ
本人はそのつもりがないにしても、私にとって発せられる言葉全てがあの子たちを擁護する意味でしか伝わってこない
この一年の溜まった不満が、もう耐えきれない、というかのように溢れ出す
「わたしが、、この一年、どんな気持ちではじめと一緒にいたかわかる、、?
他の子が自分の彼氏のこと好きかもしれないって時に、その子が私なんかよりずっとはじめのそばにいられる気持ちわかる、、?
わたし、もう、、はじめのことなにもわからない、、
もう全部、、はじめの好きにしたらいいべ、、私はもう知らない、」
そう言い切って、及川くんと葉月が向かった先へ急ぐ
「おい、、!」
と後ろから聞こえてきた声を無視して、走った
(、、追いかけては、来ないんだね、、)
彼の気持ちが、わかったような気がして、泣きそうになるのを抑える
「葉月、!」
「え、!?走ってどうしたの、!?」
走ってきた私に、驚きの表情を見せる2人
「え、香澄ちゃん、岩ちゃんは、?」
「もう、知らない!置いてきちゃった!」
無理に笑う私を、少し苦しそうに見る2人は、何も言わなくてもある程度察してくれたようだ