第29章 幸音のオルゴール【All characters 別邸2階✉️
「そうだ、ロノくんにレシピを教わって、軽食のサンドイッチを作ったんだった。
………シロ、お前も運ぶの手伝って。待ってて、主様」
「……ふん。仕方あるまい」
「うん、ありがとう」
ふたつの背を見送りながらそっとオルゴールの蓋を開くと、優しい旋律が奏でられはじめる。
そっとオルゴールを胸に抱きしめて、いつしかその旋律を口ずさんでいると。
「気に入ってくれたようで、オレ達も嬉しいよ」
クロウザーが仄かに瞳を解いて笑う。
再度伸ばされた彼の指が、その掌のなかのオルゴールをそっと抜き取り、
木組のテーブルへと置いた。
「クロウザー……?」
そっと名を呼ぶ声に、その指が伸ばされ………。
「きゃっ……!」
手首を引かれ、ぐっと近づいたその距離感に、ヴァリスが息を呑む。
一瞬だけヴァリスの頬を掠めた唇。
その腕のなかで瞠目してみるみる真っ赤になるヴァリスを見下ろして、クロウザーは片眉を上げた。
「不安を取り除くまじないだ」
ぽかぽかと身体に軽く拳を打ち付けてくる彼女に笑いかける。
静かな夜闇に包まれる、デビルズパレスの別邸が和やかな空気に包まれた。
その翌日、ヴァリスにキスをしたクロウザーが、
それを知った他の執事たちに叱られたのは、また別の話………。