第29章 幸音のオルゴール【All characters 別邸2階✉️
「主様、まだ起きてる?」
叩扉の後、捉えたのはベレンの声だった。
ヴァリスは開いていた本に栞を挟みながら応える。
「起きているよ、どうしたの?」
「よかったら、別邸の2階へ来てくれないかな?
俺達三人だけで、改めてお祝いさせて欲しいんだ」
「わかった、………着替えたらすぐに行くね!」
◆◇◆◇◆◇
急いで着替えを済ませてデビルズパレスの別邸へと向かい、
その階段を上がっていく。
叩扉をすると、すぐにその扉がひらかれた。
「主様、待っていたよ」
出迎えてくれたのはベレンだった。
部屋のなかにはクロウザーとシロの姿もあり、ヴァリスはその唇に笑みをのせる。
「どうしたの? こんなに改まって、ここに私を呼び出して………。」
「君があちらの世界で、これからの人生の行く先を決める重要な時期に置かれていると聴いたものでね。
そんなご主人サマに、ひと時の気晴らしをと思ったのさ」
クロウザーが片眉を上げて微笑む。
初めて彼と会った時も見せた、何処か皮肉の棘が滲む微笑だった。
そっと伸ばされたクロウザーの指が、彼女の頬に触れる。
「君………少し頬が痩せたんじゃないか?」
そう言って、その掌が彼女の頬を撫でていく。
「えっ……あのね、」
頬に朱を集わせて彼を見上げる。見兼ねたシロがふたりの間に割り込んだ。
「貴様………こやつが困っているだろう」
「あぁ失敬。彼女はいつも初心で素直な反応をしてくれるから面白くてね」
「貴様はこやつを何だと思っている」
睨むシロの視線をクロウザーは薄く嗤って躱す。
そのまま互いの顔を見やるふたりに、ベレンは唇をひらいた。