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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第28章 今宵はふたりで【P273〜の続き、‎🤍&🐾 ♟️*】


「あぁ、すぐに解放するとも。………ただし、」

とん、と肩を押され視界が廻る。

見上げれば微笑を湛えたフェリスのおもてが広がっていて、押し倒されのだと瞬時に悟った。



「君が僕に抵抗しなければの話だけれど、ね」

笑みを描いた唇は柔らかく優しいのに、なのにその眼は少しも笑っていなかった。

奈落の底のような、底冷えする冷たさをはらんでいる。



「っ………!」

せめてもの抵抗と彼を睨み付けるも、彼はくすくすと嗤うだけ。



愉しげに微笑んだまま、手にしたナイフで彼女のドレスを切り裂いていく。



ビリビリと薄絹の残骸となったそれを剥ぎ取るように奪われ、

必死に胸を覆っていた指はいとも簡単にシーツへと押し付けられた。



「厭………ッ!」

蜘蛛の糸に戒められているかのように、薬に侵された身体は思うように動かせない。

力の抜け落ちたままの指は、押さえ付けられた掌の下で儚く空を掻くだけ。



「厭ッ、………厭あぁっ!」



「主様!」

二人がかりで抑え込まれたベレンが彼女を呼び続ける。

彼と同じように阻まれたシロは、歯噛みしながら彼を睨み付けた。



「ヴァリスから離れろ! ………うぐっ」

その傍らに控えていた騎士たちが鞘に収められたままの剣で、彼らの身体を打ち据える。



「がっ、………うぐっ」

鈍器となってそれを繰り返し打ち据えられ、

それでも暴れるふたりに、ヴァリスは悲痛な声を上げた。
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