第2章 襲撃
昔から私の趣味を聞いて興味を持つような人間は居なかった。寧ろ、気味悪がられていた。
だが、毒作りは私の生き甲斐なのだ。
私がまだ5歳の頃、初めて魚釣りをしたとき、何時間も粘って漸く釣れた魚が嬉しくてどんな魚か確認もせずに口に入れたのだ。
無知とは怖いものだ。その魚の皮には強力な毒が含まれていたのだ。
親が気づいたのは半分ほど食べた後。普通ならば即死である筈だった。
だが、私は違った。寒気も嘔吐もすることなく、寧ろ減った腹が満たされて元気に走り回っていた。
両親は急いで病院へと連れて行ったが、検査をしても何も異常はなかった。
結局、私の肝臓が尋常な程、毒を分解する力が強いという結論に至った。
それから私の人生は、他の女の子たちとは違う方向へと向かっていった気がする。
周りの女の子達はお人形遊びやお絵かきをしていたが、私はカエルを解剖したり、森に生えている毒キノコを収集しては研究していた。
そんな私を見て周りの大人達は皆気味悪がったが、私の親だけはこの奇行を暖かく見守ってくれたのだ。
私が15になる頃には、オリジナルの毒薬を作っていた。どうせ自分に毒が効かないのなら美味しいものが良いと、その味を改良に改良し、結果行き着いたのはどんな食べ物や飲み物にも合う毒薬。
言うなればその料理に溶け込む毒薬だ。誰も毒を盛られたなんて気付くこと無くその毒に侵されていくだろう。
こんなもの、誰の役にも立たない。結局は趣味止まりかと思っていたが、世に不要なものは無いらしい。
街をぶらぶらと歩いていた時、私の変な噂を聞いたのか、ある海賊が声を掛けてきた。
その海賊が自分の開発した毒薬を欲しいと強請った為、一つ譲ると後日家に今まで手にしたこともないような大金が送られてきたのだ。
(お小遣い稼ぎにはちょうど良いかも。)
その日から、【毒姫】という名前で海賊や裏社会の人間達に毒薬を売り始めた。
勿論、海軍の目に付かないかは怖かったが、身元がバレないようには注意しているつもりだ。
そんな毎日を送っているとあっという間にお金は溜まって行った。
(溜まったお金でどんな研究をしようかな…)
と次の開発に向けての計画を練りながら、街を歩いていると…
バンッ!!!
突然、大きな爆発音と地響きがローズランド全体に響いた。