第5章 鍛錬
長い夜が明ける。
少しずつ覚醒し始めた頭は、何か温かいものに抱きしめられていることに気づき始める。
薄らと目を開けると、目の前にはゴツゴツとした胸板と立派なタトゥーがあった。
(…………え、どういうこと?)
一気に頭が覚醒し、飛び起きると目の前には半裸のローが眠っていた。
『ひっ!ローさん、なんで一緒に寝てるんですか?!』
沢山飲んだことは覚えているが疲れてウトウトしていたところからは、状況が全然思い出せなくて軽くパニックになっていた。
それに半裸とはいえ、男の裸などまともに見た事が無かったの顔はみるみる内に赤くなっていく。
「………ッ、うるせぇ。まだ寝てろ。」
突然聞こえてきたローの声に肩を震わせる。
(と、兎に角ここから抜け出そう。心臓に悪過ぎる。)
そう思い、ベッドから抜け出そうとした瞬間、ぐっと腕を引かれ、ベッドへと戻される。
『きゃっ!ローさん!?』
いつの間にか身体を起こしたローに押し倒され、意地悪にニヤリと口角を上げて此方を見下ろしていた。本能的にやばいと察知し、逃げようとしたが、両手をシーツに縫い付けられていて、全く動けなかった。
「男の前であんな無防備に寝こけるとは、良い度胸じゃねぇか。仲間とはいえ、警戒心くらいは持っておいた方が良いんじゃねぇか?」
そう言って、ローのゴツゴツした大きな手が私の腹から腰にかけて撫でる
『ひゃっ!ローさん待って、擽ったい…ッあ、痛っ!』
ローの顔が徐々に近づいて来たかと思えば首元に顔を埋められる。そのまま首筋の薄い皮膚に歯を立てられたかと思うと噛みつかれ、吸い上げられた。
ドクドクと心臓が煩い。体温上がり、顔は真っ赤だ。こんな事、今迄男の人にされたことは無い。逃げようにも逃げられないこの状況に、ローの気の済むまでされるが侭でいるしかなかった。
首筋からローの唇が離れると、漸く解放される。
「これに懲りたら、他の男の前で無防備な姿は見せるな。」
顔を赤くして茫然としている私を置いて、シャワーを浴びると言ってローは部屋の奥へと行ってしまった。